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最高裁判所第一小法廷 昭和24年(れ)1926号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人村井祿樓上告趣意第一点について。

しかし、所持はある物を自己の事実上の支配内に置くことであって、その支配が他人のためにすると自己のためにするとを問うものではない。そして原判決の判示とその証拠とを対照すれば、原判決の認定した事実は、被告人が山本一夫から依頼を受けて連合国占領軍の財産であることを知りながら、判示袋二個を同人より受取りこれを自己の自転車に積み、判示キャンプ附近から判示高架下附近まで運搬して、その間右袋二個を被告人單独で所持した事実であることを肯認することができる。從て判示袋二個は被告人が現実に実力支配内に置いたものであることは明らかであるから、原審が被告人に対し判示物件の不法所持罪に問擬したからといって、原判決には所論のような法律の解釈を誤った違法又は理由不備の違法はない。論旨は理由がない。

同第二点について。

しかし、法定刑の種類範囲内において刑を量定することは事実審たる原裁判所の裁量権に属するところである。されば、仮に所論縷述のような諸般の事情があるにもかかわらず、原審が被告人に体刑を科したからといって原判決を違法であるということはできない。それ故所論は上告適法の理由とならぬ。

よって旧刑訴四四六条に從い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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